研究室紹介
患者さんと向かい合う臨床を重視した精神医学教室です
当教室は、生物‐心理‐社会モデルに統合された精神医療を目指しています。精神療法を重視した高い臨床力の修得に加え、研究・教育に積極的に携わることにも力を入れています。福岡大学の特色を生かした、各専門分野における臨床研究から薬学部との共同研究など、多岐にわたる研究がおこなわれています。
自殺予防研究グループ
平成18年より救命救急センターに入院した自殺企図者の調査を開始しました。自殺未遂者には積極的に介入を行うリエゾンの形式をとっており、精神医学的な評価に加えて自殺に関するリスクの評価を行い、これらの人に対するソーシャルワークを行っています。これまで精神科医師だけでなく看護師、精神保健福祉士が研究に参加し、国内外で学会発表をしています。現在、行政機関、地域の医療機関との連携を図りながら、医療従事者やゲート・キーパーとなる人の自殺予防教育を行っています。
ACTION-J
日本の自殺者は平成10年に急増し3万人を超えました。国の取り組みとして平成18年に自殺対策基本法、平成19年には自殺総合対策大綱が制定され、自殺を防止する取り組みが始まっています。平成18年に始まった取り組みの一つとして「自殺対策のための戦略研究 自殺企図の再発防止に対する複合的ケース・マネジメントの効果:多施設共同による無作為化比較研究(通称 ACTION-J)」があり、横浜市立大学を中心に行われるこの研究に、平成20年から参加施設となっています。
性同一性障害(GID)グループ
当院外来では、2004年12月よりジェンダークリニックを設立し、性同一性障害(GID)の治療を専門的に行っています。治療を求めて当院を受診する性同一性障害者の数は年々増加傾向にあるなか、GIDの臨床研究も行っています。画像を用いて脳の形態的・機能的評価を行う研究、性差の影響を受けるとされる言語や視覚空間能力などの認知機能に関する研究、それらに対するホルモン療法の影響に関する研究などを行っており、まだまだ発展途上であるこの分野の研究は今、広く注目されています。平成21年度より、科研費の助成を受けており、さらに積極的な研究を行っています。
精神薬理グループ
福岡大学薬学部臨床疾患薬理学教室との共同研究を大学院生が中心となって行っています。大麻成分THCを使用した研究、marble-burying行動を用いた強迫性障害の研究、強制水泳モデルを用いたうつ病の研究、アルツハイマー病モデルラットを使用した抑肝酸の研究など、行動薬理学を基盤とした研究が中心です。一方で、共同研究のメリットを生かし、うつ病患者の唾液中のステロイドホルモンを測定するというような臨床と基礎をつなぐ研究も行っています。
老年精神医学グループ(画像カンファレンス)
脳画像検査(MRI、SPECTなど) を行った症例について、週に1回、放射線科医と合同でカンファレンスを行い検討しています。うつ病などの機能性疾患か認知症かの鑑別について、また認知症の鑑別診断や経過観察に関して、SPECT(脳血流シンチグラフィー)ではeZIS、MRIではVSRADの画像統計解析手法も用いて評価しています。現在年間に約150例の症例の画像について検討しており、集積したデータを基に診断精度の向上を目指し、また学術的な発表も行っています。
認知・生理機能グループ
福岡大学医学部精神医学教室では統合失調症のデイケア通所者を対象とした精神科リハビリテーションの効果についての研究が盛んに行われてきました。近年統合失調症の認知機能障害に対する研究は生物学的指標を中心とした評価が盛んに行われるようになり、当教室では統合失調症患者のデイケアを中心としたリハビリテーションの効果について、事象関連電位P300やprepulse inhibitionなどの生理学的指標を用いた研究を行っています。研究はデイケアスタッフ、大学院生を中心に行っており、今までに松嶋圭が「統合失調症患者に対する認知行動療法の効果に関する研究」で、田中謙太郎が「ビペリデン投与における統合失調症患者の認知機能の影響について」で学位を取得しています。またprepulse inhibitionは動物モデルにおいても同様の実験が可能であることから薬学部臨床疾患薬理学教室との共同研究も行っていて、永井宏が「Antipsychotics improve Δ9-tetrahydrocannabinol-induced impairment of the prepulse inhibition of the startle reflex in mice」とうタイトルで学位を所得しています。今後は事象関連電位P300、prepulse inhibitionに加え、発汗や皮膚抵抗により自律神経系の測定を行う研究を予定しており、統合失調症だけでなく気分障害や不安障害も対象とした研究を行う予定です。
スポーツ精神医学グループ
スポーツ精神医学グループは、2003年に「日本スポーツ精神医学会」が発足した第1回大会から、横山(PSW)、田中謙(Dr)、永井(Dr)の3人で活動しています。 日本スポーツ精神医学会は、スポーツと精神医学の関わりあう問題を課題に学会活動を行っており、研究の方向としては、①スポーツの精神医学への応用(疾患の治療、精神障害者スポーツなど)、②精神医学のスポーツへの応用(競技スポーツ選手の治療など)を2本の柱として、③身体運動と脳機能の基礎的な研究を組み入れ、これら三つに有機的な相互の関係を持たせ、スポーツと精神医学の関係を包括的に捉える医学分野にしようと考えています。 現在のグループの取り組みは、主に、永井が大学生アスリート(摂食障害、神経症など)のメンタルヘルスについて。田中謙は、精神障がい者のフットサル大会の全国への普及のサポート(大会ドクター)など。横山は学会認定の精神科専門の運動指導者資格(メンタルヘルス運動指導士資格)制度を立ち上げるために準備を行っています。 2010年9月には「第8回日本スポーツ精神医学会」を西村教授が大会会長となり主催します。これを機会にさらなるグループの発展のためにも、この分野に興味を示し一緒に活動する仲間を随時募集してます。